AWS CDK v2 RCが出たので変更点をまとめます!

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概要

AWS CDKのv2のRCが発表されましたので、正式版のリリースももう少しだと思います。v2ではどんなことが変わっているのか公式発表を元にユーザ目線でまとめます。

ちなみにv2の詳細はこちらのRFCが参考になります。

AWS Construct Libraryが一つのライブラリに統合される

v2での変更に関してはほぼこれがメインの目的と言ってもいいと思います。これ以外の変更点は細かな改修か、レポジトリのお掃除の様なものです。

今回統合されたのは各種コンストラクトライブラリです。以前は全てのライブラリが個別にnpmに公開されており、個別に使用したいコンストラクトをnpm i -D @aws-cdk/aws-lambda の様にインストールして使用していたと思います。

しかしこれには問題がありました。AWS CDKはリリースサイクルが早く、開発途中に追加のパッケージをインストールすると、以前にインストールした他のパッケージとバージョンが異なっていきます。CDKのコンストラクトライブラリ同士が複雑に依存関係を持っていることもあり、しばしばエラーにつながることもありました。さらにバーションを最新に揃えようとした時、 @aws-cdk/aws-xxx系のパッケージを全てアップデートするのが手間となっていました。

そこで aws-cdk-lib に全てのコンストラクトが格納される様に変更されました(@aws-cdk/coreも含まれます)。もともとファイルサイズなどを鑑みて分割されていたパッケージが、使い勝手をとって統合された形です。

さらに、Constructクラスが独立したnpmパッケージ(constructs)として提供される様になりました(レポジトリも分かれています)。以前からterraform-cdkなどの姉妹プロジェクトの為に切り出されており、v2では本家CDKでもこれを使用する様に変更しました。CDKとCDK for Terraformの実装上の関係性は後々調査していきたいと考えています。

以上より新しいimportは以下の様になりました。

v1

import { App, Stack, Construct, StackProps } from '@aws-cdk/core';
import { Function, Code, Runtime } from '@aws-cdk/aws-lambda';

v2

import { App, Stack, StackProps } from 'aws-cdk-lib';
import { Construct } from 'constructs';
import { Function, Code, Runtime } from 'aws-cdk-lib/aws-lambda';

現状のインストールコマンド

# インストールコマンド
npm i -D aws-cdk@next #リリース後は aws-cdk@latest
# 私の環境ではなぜかこれが必要でした。 npm i -D @aws-cdk/cx-api@next
# CDKのCLIの実行ファイルです。

npm i aws-cdk-lib
npm i constructs

Feature flagsの新しい動作がデフォルトに

リリース戦略の一つとして個人的に面白かったので2番目に紹介します。

FeatureFlagとは特定の機能を簡単に切り替えられる様にするフラグです。AWS CDKの場合、v1でのあるAPIの動作が実は正しくないけど修正するとブレーキングチェンジを引き起こしてしまう、という場合に使用されています。

例えば私のコミットですが、RDSのdbClusterIdentifierを設定する時に、AWS上ではlowercaseで保存されるのにCloudFormation上ではケースセンシティブに保存されるため、その後不整合が起きるというバグがありました。これはCloudFormationのバグと思われますが、CDKでユーザが設定したdbClusterIdentifierをlowercaseに変換してあげると親切だと思われます。しかし、今までのユーザにとってはBreaking Changeになりますし、かと行ってV2が出るまで待つのも危険という状態です。

そこで、feature flagを活用します。v1の後半のバージョンで cdk init すると、cdk.jsonに以下の様なcontextが設定されますが、これにより個別のfeatureをオプトインすることができます。

{
  "app": "npx ts-node --prefer-ts-exts bin/temp.ts",
  "context": {
    "@aws-cdk/aws-apigateway:usagePlanKeyOrderInsensitiveId": true,
    "@aws-cdk/core:stackRelativeExports": "true",
    "@aws-cdk/aws-rds:lowercaseDbIdentifier": true,
    "@aws-cdk/aws-lambda:recognizeVersionProps": true
  }
}

例えばrds:lowercaseDbIdentifier が私の設定したfeature flagです。

つまり、以下の3段回でリリースをすることで安全に変更することができます。

  1. 古いユーザはそのまま
  2. 新規ユーザはBreaking change後の振る舞いを(cdk initで)自動的にオプトインさせる
  3. v2ではfeature flagがONの時の振る舞いをデフォルトにする

この様にFeature Flagの運用はご自身のサービスでも参考になると思います。より一般的にはFeature Toggleという戦略になるらしくこちらで研究されており、解説記事も検索すると出てきます。

また、feature flag の一覧はこちらのファイルにまとまっています。

ちなみにv2では基本的に feature flag の動作がデフォルトになり削除されますが、こちらの3つは後方互換性のためにOFFに出来る様に残す方針です。

改修のサイクルを変更

v2からはAPIのマイナーバージョンアップではブレーキングチェンジが出なくなります。

v1では@aws-cdk 配下にstableなAPIとexperimentalなAPIが混在しておりましたが、ドキュメントを参照するなどして個別に確認をする必要がありました。そして、experimentalなAPIに関してはマイナーバージョンアップでブレーキングチェンジされることがありました。v2からはaws-cdk-lib に集約されるため、よりstable|experimentalの違いが分かりにくくなるというのもあり、実験的なAPIは@aws-cdk-experiments 配下に移動され、0.x.x系のバージョンが振られる様になります。このAPIがstableになった際はaws-cdk-lib に移動されます。

非推奨(Deprecated)なAPIの削除

deprecatedなAPIが削除されました。v1で使用している場合は、tsdocに@deprecatedコメントがつけられていたので、取消線表示に気づいていたかと思います。

新しいブートストラップリソースがデフォルトに

CDKを初めて使う時はcdk bootstrap を実行してデプロイ用のS3バケットを作成すると思いますが、cdk bootstrap で生成されるリソースが変更されました。その為、CDKをv2へアップデートした際は再度cdk bootstrap を実行する必要があります。

bootstrap用テンプレートの新旧比較はこちらにあります。

まとめ

ユーザにとっては大きな使い勝手の変更はありませんが、レポジトリの構造や今までなかなか手入れできなかったところが修正されています。

I as Cの発展をど真ん中で推進するAWS CDKをこれからも応援していきたいです。